ある取引先からの納品数量が納期に満たないときは顧客への納品が遅れてしまうため、それぞれの取引先への注文数量を必要数量より多めにして注文というようなムダも行なわれていたようです。 また、原材料の一部は商社にも発注しています。商社が発注している先の取引先からの納期を把握しておきたいという業務上の希望はありました。 けれど、直接の取引先との対応においても業務がまわっていないので、商社経由の取引先の納期確認まではなおさら手がまわらないという状態でした。 R社では社長が陣頭指揮して、生産納期遅れの原因である部品調達納期遅れの購買管理問題を撲滅していくためのプロジェクトが発足しました。 プロジェクトでは購買管理部長を中心に事務局が持たれ、次のような方針案を社長に報告しました。
(1)注文情報の電子化(処理手順簡素化)による到達スピードアップ (2)納期確認の電子化による集約手順簡素化と適切かつ迅速な発注先の選定 (3)商社が手配する(2次)取引先の納期回答・出荷状況も直接チェック可能とする
これらの購買管理上の課題を解決するためには、インターネットを利用したWebEDIが必要となる点を購買管理部長は社長に説明しました。
とくに、この方針(1)の「注文情報の電子化(処理手順簡素化)による到達スピードアップ」を実現する条件として ・注文書を自社内で紙出力しない
・取引先がホームページで注文を確認する
・注文書は取引先で出力する の環境に移行することにより、注文にまつわる郵送・FAXの手作業やコストはほぼゼロ(既にR社は汎用の目的でインターネットにブロードバンドで接続しているため、この費用は除いて)となって、 WebEDI化は資材購買管理部の発注業務で最も負担の大きい作業も解消されることが強調されました。
ここで、購買管理部長は社長には詳しくは説明しませんでしたが、この結果を実現するには取引先の協力が不可欠であることを購買管理部長は自覚していました。 そのため、購買管理部長の指揮のもと実務的にWebEDI化を導入するにあたっては、取引先の協力の得やすい環境が提供できるように注意していきました。
また、情報システム部門に購買管理システムとWebEDIを連動させるしくみを構築してもらう際に、過度に情報システムに負担がかかる仕組みを採用してしまうと、情報システムが対応しきれなくて、R社としてWebEDI導入が頓挫してしまうようなことがありえます。 それは避けなければなりませんでした。
そこで、購買管理システムから注文データはテキストファイルで切り出せば、中継のパソコンを介して容易にWebEDIへ自動連動できるしくみ(ASP)を採用しました。
(2)点目の納期確認の電子化による集約手順簡素化につきましては、次のような対応を行いました。 まず、取引先はR社からの希望納期に納品できるのであれば、WebEDIの納期回答画面でチェックボックスをクリックするだけで回答できるようにしました。また、希望納期に回答納期が合わないときもカレンダーの日付をクリックするだけで回答できるようにしました。
その上で、これはあくまで納期回答がやりやすいことが前提でなくてはなりませんが、納期回答をしなくては納品書が出力できないしくみにしました。
このしくみの導入により、取引先は納期回答をしなければ納品ができない流れとなりましたので、取引先からの納期回答を100%にすることができました。 そして、回答納期は差異がある注文のみを資材購買管理部の担当者が購買管理側画面でチェックし、必要であれば再検討を依頼し、希望納期どおりのものはそのまま希望通りの情報で、回答納期情報を生産管理システムに自動反映しました。 また、納期遅れを調整できない注文を早期に発見し、希望納期に対応している別の取引先への転注を速やかに行えるような実行環境としました。 このしくみの導入により資材購買管理部の納期管理工数は激減し、納期情報の収集率と精度が大幅に向上しました。 納期遅れが予見される注文は比較的すみやかに転注が行えるようにしたことにより、製品の生産遅れ・納期遅れの発生も完全に0ではありませんが、かなりの割合を無くすことができました。
(3)点目の商社が手配する(2次)取引先の納期回答・出荷状況も購買管理部が直接チェック可能とする点ですが、 これはプロジェクトの進行途中で、資材購買管理部が取引量の多い取引先の商社へこの問題を持ちかけたところ、先方にとってもかなりのメリットがあるとのことから、積極的に協力してもらえることとなりました。 システムの機能追加費用も一部分担してもらいながら進行させることができました。
1次取引先(商社)は自社分の注文データに自社が取引する2次取引先(メーカーなど)をひもづけます。 (発注元のR社は基本的にこのひもづけはできないので管理しません。)
そして、2次取引先がログオンするためのアカウントマスタ情報も1次取引先(商社)が管理します。
2次取引先が利用する専用のアプリケーション画面を提供します。 その画面で2次取引先が直接納期を回答し、納品書を出力します。
この2次取引先の納期回答をR社資材購買管理部の担当者が直接チェックします。
1次取引先の商社も2次取引先のメーカーから納期回答を把握できますので、従来電話やFAXで行っていた納期確認作業を省力化し、捕捉率と精度を上げることができました。
R社資材購買管理部は他の直接の取引先と同様のやりかたで納期が確認・収集できます。問題の無い納期はそのまま生産管理システムに自動反映することができ、直接の取引先と同様の効果を得ることができています。 このように、R社の資材購買管理部門ではWebEDIを導入したことにより、注文と納期確認の負担業務を削減・廃止して注文到達スピードと効率をアップし、 かつ、取引先からの確認納期の捕捉率・精度を飛躍的に向上させる体制を実現できた好事例と言えます。
WebEDIの導入により、さまざまな効果を実現させていく上で欠かすことのできないのが取引先の参加・協力です。 全社の取引量のほとんどをカバーするくらいの数の取引先の参加確保が、プロジェクトの成否を左右します。 WebEDIを成功させる上での重要ポイントは ・取引先に費用負担をかけないこと
・取引先の業務改善・事務量減少に寄与すること
・情報共有に必要なアクションをシステムに組み込むこと といえます。 
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